武田武士さん(10回生)
武田の笹かまぼこ 代表取締役社長
【高校生時代の思い出】
実は、私は利府高校へ4年間通っておりました。小中学校と野球をやっていまして、近くの公立高校で野球の強豪といえば利府高校ということで利府高校を選択し、野球部へ入部いたしました。しかし肩などの怪我や周りとの競争の中で徐々に挫折感を抱き、そんな中でだんだん学校も休みがちになってしまい結果的に出席日数が足りなくなり留年となってしまいました。留年が決まった時は退学も考えましたが、生まれ変わったつもりで一度リセットして取り組もうという気持ちになり、一発奮起して学校に通い続ける道を選びました。
二度目の一年生は年齢が一つ上という意識を捨て、積極的に同級生の輪へ飛びこむようにしました。その甲斐もあり、通常の倍の2年間分の友達に恵まれました。部活は奉仕部へ入部しましたが運動部から入部した生徒も多く、文化部でありながら運動会での部活対抗リレーではぶっちぎりで優勝したこともありました。また、友人とコミックバンドを組み、文化祭のステージで演奏したことも良い思い出になっています。
こうして4年間の高校生活を送りましたが、終わってみれば充実した高校生活となりました。これも一年生の時に挫折した悔しさがあった経験や、自分本位ではなく思いやりを持って人と接することなどが自分にとっても良い高校生活となった要因だと思います。
【高校卒業後】
高校卒業後は早く働いてみたいという気持ちもあり就職をいたしました。親は家業を次ぐことも考えていたのかもしれませんが、まずは外に出て働き始めました。しかしながら数年後に家業のかまぼこ屋の番頭をやられていた方が病気で倒れてしまい、身内であった私に白羽の矢が立ち家業のかまぼこ屋へ入社することになりました。とは言いましても兄もおりましたので、当時は社長として家業を継ぐということはあまり現実的には考えてはいませんでした。
2011年に東日本大震災がありましたが、地震や津波とは関係なく震災直後に社長であった父親が病気で他界し、会社も被災したこともあり事業の継続をどうするかは悩みました。しかし社員たちからの後押しもあり。兄が社長に就任し会社として事業を継続することとなりました。
そして翌年の2012年に兄と一緒に経営者向けのセミナーを受講し、そのカリキュラムを進めていくうちに自分が主体的に経営に携わらないといけないんだという気持ちになりました。その後は代表取締役専務を経て2019年に代表取締役社長へ就任いたしました。しかしながら就任後すぐにコロナ禍となってしまい、観光産業の一員である弊社も打撃を受けることとなってしまいました。そこで、コロナ禍でも非対面非接触で販売ができる取り組みとして自動販売機による販売を始めました。この取り組みはメディアからも関心を持っていただきたくさんの取材を受けることとなりました。また、震災の時の経験も踏まえ、日持ちする商品を開発したいという思いもあり「缶詰」へと着眼いたしました。ちょうどそのころ、同じ展示会に出展していた仲間たちと一緒に何か出来るんじゃないかという話もあり、缶詰加工会社の技術とワイナリーの監修により弊社の商品を缶詰に加工し、ワインと一緒に販売をするという企画を始めました。これが評判を呼び。2020年の「新東北おみやげコンテスト」においては、東北六県から出品された273品の選りすぐりの逸品の中から見事グランプリを獲得することとなりました。この成功に続きまして第二弾として地元塩釜の地酒とのコラボ商品を開発しています。このような取り組みは物(商品)が先にあえるのではなく、その時々のシーンに合わせて物(商品)があるという考え方をベースにしています。これからもこのような取り組みを広げることで、それぞれの商品のファンの方へ新しい商品の楽しみ方をご提案していきたいと思います。
利府高校生へ向けて
これまでお話したとおり、私の人生は決して順風満帆だったわけではありませんでしたが、出会う人々に恵まれたり前に進む気持ちを持てたことで諦めない心が醸成されたと思います。高校生活において、部活動などでがんばった経験は、社会に出たときに自信になると思います。そしてやはり自我に陥らずみんなで協力していくことの大切さを感じことが大事だと思います。何かを得ようとすると何かを犠牲にしなければなりませんが、私が働きながら勉強しているときはやはり時間が取れずに苦労しました。そこで朝の時間を活用しようと思い毎日4時半に起きて課題などの時間に充てました。工夫次第で現状は変えることが出来ます。私は「現状維持は衰退と同じ」と思いながら常に向上心を持って事業に取り組んでいます。ぜひ利府高校生のみなさんも、常に前向きな気持ちで素晴らしい高校生活とその後の人生を送ることを祈っております。ありがとうございました。